まず粟生選手、序盤でダウンを奪い、勢いに乗ってそのまま倒すかと思えたが、百戦錬磨のラリオスが後半追い上げ、僅差の判定で敗れた。
60戦以上のキャリアと世界戦の経験の差が、出たように思う。
ただ、粟生選手にとって今回の負けは、大きくレベルアップするためのきっかけになると思う。アマチュアから、プロになって、ほとんど負けていないことが、唯一の弱点であったと私は以前から考えていた。
この負けから学ぶことは多い。大きく飛躍して、本当に強い世界王者になることを期待したい。
粟生選手は、もっともっと強くなる。
長谷川選手は、どこまで強くなるのだろう。
長くボクシングをみているが、彼ほど世界レベルになってから成長し続ける選手を見るのは、始めてである。
東洋チャンピオンを獲ったジェスマーカ戦、世界を獲ったウィラポン戦、ともに戦前は長谷川不利の予想であった。
勝った後も、長谷川の番狂わせ的な雰囲気があったが、今の彼をみると、過去のそれらの勝利は、当然の結果であったことがわかる。
ボクシングは、単純なパンチの打ち合いのように見られがちであるが、自分が打ったときに仕留めないと逆にカウンターをもらう。
自分のパンチが当たり、相手のパンチをもらわない距離をはかり、いろんな駆け引きやフェイント、足の動きや肩の動き、目の動き、フットワークの距離や幅、スピードの強弱、右回り、左回り、あらゆるパンチの種類や動きの強弱、スタミナペース配分、試合中の微妙な空気などを考えながら、攻守を行う。
そのため世界戦にもなると、それらが高いレベルで拮抗しているため、今までKOを重ねていた選手もなかなかKOできなくなることが多い。
しかし、長谷川選手は、そのl逆で、デビュー当時は判定が多かったが、相手のランクが上がるれば上がるほどいい意味で期待を裏切るような完璧な勝ち方をする。
昨日の試合もサウスポーが苦手ということで、苦戦を予想していたので、少し気を抜いて見ていたら、いきなり相手が倒れた。
ビデオでみると相手の意識のないところから、絶妙のスピードとタイミングでパンチがヒットしている。
サウスポーを克服したことで、長谷川選手の欠点がなくなったと思う。
このボクサーは、どこまで成長するかわくわくする。
しかし、私の作ったマウスピースを使用していた徳山選手は、長谷川をスパーリングで圧倒していた。
徳山選手は、本当に偉大なチャンピオンであった。
長谷川選手が防衛を重ねるたびに考えてしまうことがある。実現しなかった徳山対長谷川の試合のことが残念である。
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