リングの悲しみ

元日本チャンピオンで友人の田中聖二くんが亡くなって数年経過しましたが、先日ボクシングの試合後またしても選手がお亡くなりになりました。 

聖二くんと同じ悲しみを二度と味わいたくないと思っていたが、残念な結果となってしまった。

今回も日本タイトル戦であった。意外に思うかもしれないが日本では軽量級の選手にこのような事故が多い傾向がある。

中量級以上であれば、パンチがタイミング良く当たればKOになる確立が高いため、試合を止めることができる。

KO負けした選手はそのまま引退することも多いためダメージの蓄積が回避される。

軽量級のパンチは、タイミングよく当たってもKOが難しく、何とか試合続行が可能になることが多いため最終回までもつれ込むことが多い。

そのため負けても判定であれば、次がんばろうという気持ちになり、キャリアが長くなる。
キャリアが長い選手ほど疲労やダメージが蓄積されることになる。

また、軽量級は年齢が上がるにつれて減量が厳しくなり、血液の循環も不良になってくる。厳しい減量が軽量直前になると唾液も出なくなる。

試合が原因である死亡事故の回避は、レフリーやリングドクターが早く試合を止めることのみで防止できるものではない。
 
聖二くんが亡くなって以来、ボクシングの死亡事故を調べるといくつか傾向が見えてくる。

バンタム級以下の軽量級の選手が多いこと。脳内の出血や血腫など脳の血管に障害を受けていることが多いことがわかる。

そこでプロテストに合格したときに脳の血管の検査をもっと詳しく行った方がよいと思う。最低1年1回の脳の検査を義務付け、デビュー時と比較して血管が細くなっている選手や明らかに脳の血流が悪くなっている選手で、治療が困難な場合は引退勧告するべきである。

年齢による引退勧告やレフェリーストップのタイミングなど、昔と比べて改善された点は多く見られるものの、亡くなる選手がいるかぎり反省し、改善できることはしていった方が良い。

ジムや選手の気持ちを考えると次こそ「ランカーになれる」とか「次はタイトルマッチができそうだ」とかいう選手に体が動く段階で突然引退勧告することは非常に難しいと思うが、脳の血管による危険が証明ができれば納得してもらえると思う。

今でも田中聖二くんのことを忘れることはない。彼はボクサーである前に私の大切な友人であった。
友人が若い時に亡くなることは、残された人たちの人生にも深い悲しみを刻んでしまう。

二度と試合で亡くなる選手が出ないようにしていきたい。

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